DJ'S PROFILE



大貫憲章/KENSHO ONUKI


 モッズの新しいアルバムを聴いた。えーっと、コレで一体何枚目になるんだっけ?なんて、多分熱心なファンに怒られそうだが、実際、数え切れない。資料を見ると37枚目になるようだ。ウワ〜ッ、そんなに出してたのかよ!?それが素直な感想。他人事みたいな言い方に思えるかもしれないけど、そうじゃない。自分のことにしても、19才から音楽ライターの仕事を始めて、今までおよそ35年間それを続けて来たことになるんだけど、一体何枚のレコード(CDも)の解説を書いて来たのか、とか、どれだけの取材をしたり、あるいはされたりして来たのか、まったく分からない。そう、いちいち覚えてなんかいられないんだよね。

 何しろ、ただひたすらにやり続けて来ただけなんだから。そりゃあ、思い出は数え切れないほどあるし、思い出と言うからには、そのひとつひとつを何となくは覚えている。けど、鮮明に当時のままに覚えていることなんて、正直ひとつもないかも。35年をひたすらロックが好きで手当りしだい、その時にやれることをやってきた、それだけ。

 モッズとのこともその中のひとつに過ぎない、ということにはなる。でも、そうは言っても、例えば自分が初めてロックなるモノを感覚として意識した瞬間は今も決して忘れていないように、(それってナニ?と言われればベンチャーズのエレキ・サウンドを初めてラジオか何かで聴いた時なんだな。もう、コレしかないって電撃バップ状態だったよ)モッズの連中と初めて出会った時のことは、今でもかなり鮮明に覚えている。つまり、それほど彼らのその時の印象は強烈だった。ボクシングの聖地として知られる後楽園ホールで、上京したばかりの彼らのステージを見た。まあ、正確に言うと、担当のディレクターに見に連れて行かれたんだけど。

 そこはディスコのパーティー会場になっていて、そのアトラクションのひとつとしてモッズのショウがあったわけだ。まだ、世間の99%の人が彼らのことを何も知らない(自分も99%のひとりだったんだが)頃で、実際に彼らが演奏を始めてもそれを注視するお客はほとんどいない、まばら、なんてモンじゃなく、良くてせいぜいボンヤリ眺めてる程度か、とりあえずバンドが出たからステージ前に行こうか、なんてとこ。

 しかし、それを見たぼくは驚いたんだな。コイツらはホンモノのR&Rバンドだって確信みたいなものが身体にビビッて来た。どうしてかって?そりゃあ、キミらと同じだと思うよ。キミらもモッズのステージを見て、何か理屈じゃない、言い様のないスピリチュアルなと言っても大袈裟ではない不思議なエナジーと本能的な人間の野生みたいなものを感じたはずだ。説明なんて要らない熱くて、何だか素晴らしい感覚、そいつをその時にぼくは感じた。ピストルズやクラッシュといった当時のパンクのホンモノと似た感覚を彼らに覚えたのだ。この会場にいるパーティー・ピープルには分からなくても、彼らを必要としている人間はこの日本にたくさんいるはずだ、と、そんな風にも感じた。

 あれからもう長い歳月が流れた。時代も変わり、音楽の流行りも変わった。しかし、人の心なんてそうは変わらない。それを信じるからこそ自分もここまで来れたし、モッズもそうだろう。確かに時分はもう50過ぎの立派なオトナいやオヤジだ。でも、このオヤジは同じ世代の一般的といえるオッサンたちとは明らかに違う。だって、今も頭の中ではベンチャーズやビートルズが15の頃と同じように鳴ってるんだもの。それが原動力になってるんだものね。モッズの連中もトシはとった。当たり前のこと。ロックがティーンエイジャーのモノなんてのはウソっぱちだね。それは多くのベテラン・ミュージシャンがすでに証明済みだ。日本にもユーヤさんやキヨシローくんやレックや鮎川くんや、とにかくやり方はそれぞれで違うかもしれないけど、確実に今も自身のロックを生き続けている人たちがいるじゃないか。モリやんもキーコもチサキもカジウラも、同じだ。ロクなオトナじゃないぜ。だからR&Rなんだよ。ダニー&ザ・ジュニアーズは歌った。ROCK'N'ROLL IS HERE TO STAY ってね。まさに、それだ。ぼくらの心の中からR&Rは永久に無くならない。いつも、ココにあるものなんだ。そういうオトナになってくれよ。NEVER DIE!